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高歌哄笑-古賀武夫エッセー-


平成十四年6月号「自立―自分の人生、自分で責任を取る」

「自立」―自分の人生、自分で責任をとる

ご存知のように、古賀英語道場の道場君は、「自立、協力、共生」です。(下段参照)

「自立」とは、物事を人に頼ったり迷惑をかけることなく、自分で責任を持って行うことです。

当道場の生徒さんは、素晴らしい資質、そして、努力する能力も兼ね備えた方々が多いと感じています。しかし、ここでもう一度、「自立」を考えて頂きたいのです。

私たち、戦後の団塊の世代といわれた時代からすでに中学生や高校生の塾通いは大はやりでした。戦後すでに五十七年、幼児から高校生をターゲットにした進学塾は、いまやある意味、加熱状態にあるのではないでしょうか。

と言いますのも、週に二日から六日、平日なら、一日三、四時間、学校のない土日なら一日九時間も十時間も塾にいる子がいるというのです。

私は、そういう子は、自分の意思はともかく(ほとんどは親の意思で、子供はある意味の親孝行として)。勉強動物園のおりの中に入っているのだと思います。

学校で勉強し、補習がある場合は朝補習、夕補習を受け、部活をやり(やっている子はまだいい)、それでもがんばって塾に行く。塾から帰れば、宿題が待っているわけですが、やる時間がほとんどない子が多い。 つまり、家で勉強する代わりに塾に通っているのではないかと思うのです。

塾に行けば、場があり、友人がいる。しかも面倒を見てくれる先生までいる。至れり尽せり、自分の家とは大違いです。逆に言えば、そういう場でなければ、一人では勉強ができなくなってしまっているのではないでしょうか。残念ながら、当道場でもその傾向がずいぶんと出てきました。要するに、家で勉強する暇はないと仮定して、道場での授業時間内で内容を消化し、宿題は極力出さないという傾向です。
前は、中学、高校生であれば、一時間の授業に対して、少なくとも一時間か二時間の予習が必要な授業を行っていましたが、現在は不可能と言ってよいとおもいます。

数年前、「英検一級講座」を土井美智子先生にお願いして開いて頂きました。週1回半年間限定の短期集中講座でした。土井先生は、一生懸命準備して何とか合格者を出そうと努力されました。何せ、英検一級は、佐賀県から二年に一人くらいしか合格していないのですから、週一回だけの講座で、もし帰ってから何もしなかったならば、絶対に合格できるような試験ではありません。ここで受ける以上の何倍もの自助努力が必要とされます。

語学の習得は、涙と汗と血の結晶だと思っています。明確な目的意識と地道な努力の継続が必要です。

私は、おりを出たあとでも、しっかりと自分の目標を設定し、その目標に向かって努力を続けていく人たちを見ていきたいと思っています。そのためには、おりに入る時間を極力少なくし、他人のマニュアルに頼らず、自分の自由な時間を自分一人で組み立てていくという孤独で辛い作業が必要です。人が作ってくれた狭いおりの中で、仲良しクラブの皆さんとだけ、出された餌を食べ、満足させられて育っていけば、表面的には成果が出たように見え、親も喜んだとしても、自然界に出された時には、自分で餌も探せず、敵の標的になって、つぶされていくのが落ちなのではないでしょうか。

大人向けの英会話学校、カルチャー講座などは更に人気を集め、生涯学習はもてもての状況です。確かに手軽で便利、いろんなものが学べる状況は、世の中に活気を与えます。

いわゆる勉強だけでなく、スポーツの方も、健康増進、心身のシェイプアップのためにいろいろな講座が組まれ、盛況のようです。肉体を使うことが極端に少なくなり、ストレスがたまる一方といわれる現代社会においては、大変な結構なことと考えます。

頭や身体のみならず、心の成長、癒しを目的とした講座もたくさん用意されています。その極端な例が、えせ宗教やカルト集団なのかもしれませんが。

いずれにしても、自分がやっているのか、やらされているのかを問い直し、自分の人生は自分で責任が取れる様、努力を怠らず、自立して生きていけるよう、生徒さん自身、親御さん、大人の皆さんが協力していきたいものですね。

参考:古賀英語道場道場訓
一、「自立」悠久の時の中、広大無辺の宇宙の中、ただ一人の素晴らしい存在が自分であることを十分に自覚し、責任を持ち、日々自己実現に努めること。
一、「協力」他のために尽くす高邁な志を抱き、遥かな夢に情熱あふれ、強く優しい人となるよう努めること。
一、「共生」山川草木すべての命を慈しみ、思いやりと畏敬の念をもち、大調和の中、共に豊かに生きていくよう努めること。

(平成14年6月25日 古賀武夫)