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高歌哄笑-古賀武夫エッセー-


平成十五年9月号「教師の生きがいは、生徒の成長~INSPIRATION~」

教師の生きがいは、生徒の成長
INSPIRATION

やっと、暑く超多忙の夏も終わり、本当にやっと秋らしい涼しい季節がやってまいりました。皆様つつがなくお過ごしのことと拝察申し上げます。

7月、8月、英語のほうでは、第18回スピーチフェスティバルで皆さんのすばらしい英語を聞かせていただきました。そして、各クラス12月の第24回英語劇祭に向けて、急ピッチで準備が進んでいます。この二つに加えて、来年、14回目を迎える英語カルタ大会が、英語道場の三大行事なのですが、これらに関するOB、OGの逸話は枚挙に暇がありません。

その中の一人、今年三十才になった福岡資麿君がいます。資麿君は、たぶん、小学校一年から卒業まで道場で学び、英語劇でもスピーチでもずいぶん活躍していました。英語劇祭では、青鬼、意地悪じいさん、銭無し平次などを熱演していました。

五年生のE2-1クラスのときの紹介文には、こう書いてあります。

「資麿君はとても格闘技好きで、暇さえあれば暴れています。」

西高では、生徒会長も務め、また、小中高代と、剣道で大活躍、政治家を志す現在も剣道は続けているそうです。

その資麿君が、先日久しぶりに会ったときに驚くべき告白をしたのです。

「僕が、人生で始めて挫折ば感じたとは、この英語道場やったです。」

「何で?どがん意味?」

「英語のクラスでは、一年年上の人たちと一緒やったですけど、あんまいすごか人たちの多して、圧倒されてとても勝てんて思いました。」

と、いいながら、高校時代は、九州高等学校弁論大会(日本語)では最優秀賞を獲得し、その後も、人前で臆することなく仕事ができたのも、やはり、英語道場のお陰であったし、当時の道場の仲間への思い入れは、学校ともどことも違い独特で、深く懐かしいと本人は言っています。

スピーチフェスティバル、英語劇は、かなり努力を必要とします。特にスピーチは、人前に一人で立つのですから、胆力も必要です。非常に多くの道場OB、OGの皆さんから、高校、大学、そして仕事というその後の人生で大変役に立った、ということを聞いています。

また、道場を始める前、私は、高校の先生を三年間勤めさせていただきました。最初に非常勤として赴任したのが佐賀西高校です。西校では、わずか半年程度しかお世話になりませんでしたが、フランスから帰ってきた直後で、私自身感動の塊のように炎メラメラでしたから、まず三年生、そして、彼らが卒業した後は、一年の生徒を観客に、歌って踊って、怒涛の漫談を休み時間まで続けていました。ですから、教科書はほとんど進まず、フランスでの冒険談を生徒の大笑いにも負けず、大声で叫び続けていました。生徒は迷惑だったかもしれませんが、我ながら、すごい、楽しい半年だったと思っています。

さて、そのときの生徒さんの一人に原口一博さん(当時一年生:現在衆議院議員)がいました。原口さんは、最近テレビのレギュラーでもしょっちゅう出演されていますので、皆さんご存知かと思います。

私も、特に地球市民の会の方では、原口さんからずいぶんと共感と協力を頂き、感謝しています。今年になってからも、数度、彼の話を聞く機会がありましたが、あるとき、大観衆を前にして、私のことをずいぶん長く熱く、感激しながら語ってくれたのです。要点は次のようなことでした。

「私が高校一年の時、落ちこぼれであった私のクラスにいきなり、変わった先生が現れ、『小さく固まるな、世界に大きく目を開け、志を持て!』と叱咤激励して下さいました。私は、その後、大学、松下政経塾、そして、政治家生活を通じて、先生の言われたとおり、世界に羽ばたいて参りました。私の現在あるは、古賀先生に負うところ大なのです。」

私は、教師冥利に尽きると感動致しました。私は、その時その時言わねばならないと思ったことを言い、行動してきましたから、自分の言葉は、逐一覚えてはいないのです。にもかかわらず、私の漫談から、心を動かされた (inspire) 人物がいたということは、恥ずかしくも有難い事だと感じ入っております。

大学時代の家庭教師から始まり、フランスでの空手師範、高校教師、そして、現在の道場での指導、ずいぶん多くの人々と接し、頭もガンガン小突いてきました。
にもかかわらず、ついて来て下さった皆さんのことを思うと、教えさせて頂くという仕事は本当に有難い事だとしみじみ思います。今、私から怒鳴られ、頭をたたかれている現役の皆さんも、何年か後には、きっとすばらしい仕事をし、人のために役立つ人間になっておられることと信じます。皆さんの成長こそ、私を始め、教師の生きがい、仕事のやりがいだと思います。

原口一博、福岡資麿両氏の健闘を祈りつつ、私たちもともに、一所懸命研鑽して参りましょう。

(このコーナーは、普段なかなかお目にかかれない保護者の皆さん、OB、OGそして現役生徒の皆さんへの私からの愛情を込めたメッセージです。)

(平成15年9月22日 古賀武夫)